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オリンピックエンブレム騒動に物申す

とうとう、佐野氏のオリンピックエンブレムが、正式に却下される事になった。

オリンピックエンブレム


それまでに、様々なダークな噂が浮上した為の判断らしい。
国民の支持を得られないエンブレムを使う事が、望ましくない。
確かにそうかもしれない。
この判断が間違っているとはいえない。
私個人としても、IOCのコメント同様に
「このエンブレムのオリジナル性は否定できない。
ただ日本国内の批判の重さや日本国の決定は理解できる。」
ほぼ、同じ意見である。


色々な所に飛び火してしまい、そもそもの問題点がぼやけてしまっているが
まず、このエンブレムが盗作なのかという問題が、一番重要だろう。

あのね、皆ね、余計な事に騒ぎすぎ。
確かに、転用禁止のものをわざわざ写真を差し替えるなど、
迂闊としか言いようのない事もやった。
ただ転用された事で、元の作者がどれだけの損害を被ったかが問題で、
その点では、ロゴの模倣とは比べものにならないほど、小さな問題ではないかと思う。
著作権というのは、作者がその作品に心血を注いで、オリジナルな
どこにもないその人にしか作れないものに対して、守るべき権利だ。
その転用写真が、その著作権に当たるような作品なのかというと
甚だ疑問だ。

しかし、そのエンブレムそのものが、ベルギー美術館のロゴの模倣なら
それは、ちゃんとした罪で、著作権侵害にも当たるだろう。


で、問題のロゴでアル。

佐野氏はデザインに関して、模倣は決してないと言っている。
それを信じるのであれば、だが
デザインをかじった者として、
乱暴な言い方を恐れずに言えば
「世の中に、真にオリジナルなものなど、
ほとんど存在しない」

と、私は思っている。

「想像で、宇宙人を描いてみて」
試しに、やってみてほしい。
これは、ずっと前、北野武がテレビで言っていたのだが
同じように言って、色んな人に描いてもらうと、
大概の人は、それでも、人間に似た生き物を描くのだそうだ。
例えば、テレビでおなじみの、たこのような火星人であったり
人間の色や形が違ったものや、どこか足したものであったり。
目と耳と鼻があって、手足があり、モノを食べ排泄する。
形や数は違ったり、何か足されたり欠けていたりしても
基本的に、地球の生き物の生態が模倣された生き物を描くのだそうだ。
地球の生き物とは全く違う生態のモノを、人類は想像できないものらしい。
北野武は言っていた。
「全く誰も一度も見た事のないものは、誰も作り出せないんだよ。」
何の番組で、何の意図で話された会話か忘れてしまったが、
私は、それを、なるほどなあと思ったものだった。

デザインも、それに似たものであると、私は思っている。
最小化、単純化すればするほど、形の制限は限られて来る。
そして、人間の感覚というものは、実は単純で、
ヒトが心地よい、見て気持ちよい、「良い」と思えるものも
実は限られていると思う。

一般的に多くのヒトは、普通の三角形を安定していると見て
逆三角形は、ヒトに不安を与える。
このように単純ながら、ヒトの感覚にも、決まった細かいルール?がある。
だから、「良い」とされるデザインも、自ずから似てしまう宿命がある。
そして、実は、誰も見た事のない新しいモノには、
最初人間は、拒否反応を示したりする。
見た事のないモノは、ヒトに不安を与える。
自分の知識の範疇を超えたものに、ヒトは驚き恐れ排除しようとするものだ。
古来の日本人は、西洋人を異形と呼び、弾圧した。
印象派と呼ばれる今では一流の画家達も、最初の評価は酷いものだった。


その中で、オリジナルでありながら「良い」と多くのヒトが共感できる
ものを作り出す事が、
デザイナーとしての力量であり、使命であり、プライドでもある。

よほどの天才でもない限り、頭の中にデザインがポッと浮かぶ事などない。
膨大な資料や、膨大な先人のデザインを見て研究し
あらゆる街中の「デザイン」がアイディアの源として蓄積された後の
ひとつのデザインに辿り着くものの筈だ。

その中に、ベルギー美術館のロゴがあったかどうか。
もし、自覚して「あった」と覚えているくらいなら、それは模倣だろう。

けれど、その膨大な積み重ねの中の、足し算引き算、修正の中で
似たようなロゴが生まれても、不思議ではない。と思うのだ。


デザイン業界の多くの人が、佐野氏をかばうような発言をしている。
的外れな意見もあるが
多くのデザイナー達が、自分と同じような意見なのではないかと思う。

佐野氏を批判している多くの人が、
魂を削って、心血を注いで、モノを作り出した事の、ない人ではないのか。
中には、そういう人だからこそ、佐野氏のいい加減さに腹が立つ人もいるだろう。
けれど、ネットの書き込みや意見を読んでいると
一度でも、命を賭けて何かを作り出した事のある人ならば
こんな事は言わないのではないだろうか、という意見がとても多い。
クリエイトする仕事の大変さ苦しさを、侮辱するような意見もある。

例え、その人に何か悪い行いがあったとしても、だ。
その人の人生やこれまでの業績や家族の幸せまでが、汚されていい筈はない。
批評家の文章にあった。
人の作品を批判するからには、賛辞するより倍以上の情熱で
その人の作品を読み理解した上で、批判しなければならないから
生半可な読解ではとても出来ない。と。
そこまでの酷評をするのなら、する側にも、これくらいの覚悟が欲しい。


個人的には、このエンブレムのデザインは、良く出来ていたと思っている。
最初の案よりは、こっちの修正案の方が、断然良い。
東京の「T」を形取りながら、
円を彷彿させて、東京オリンピックの○を思い出させるし
黒、赤、金、銀、が、日本の伝統色としてお目出度いイメージがありながら
モダンな感じも出ている。直線と円の組み合わせもバランスがいい。
単純に、デザインとしては、良いデザインだったと思う。
c0122270_08153982.png


個人的には、佐野氏は、エンブレムの模倣はなかった、と信じたい。

こういう良いデザインが作れる人が、
本来の仕事の評価とは別のところで、無責任なパッシングで
今後のチャンスがなくなってしまわぬよう願う。
批判する人は沢山いるので、
こういう意見が1人くらいいてもいいだろう。
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rimico

Author:rimico
婦人靴のデザイナーを経て、現在はフリーのイラストレーター

現在、靴メーカー勤務中
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